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技に酔い。縁を味わう。

3.11以降、僕のモノ選びの基準は変わりました。キーワードは、「サバイバル」と「リラクゼーション」。 身回りの日常使いの品は、作り手の顔が見えるモノを選ぶようになりました。「金は天下の回りもの」の可視化を進めた、というワケです。この日、手に入れたのは、笛吹きガラスのぐい呑み。ひび割れのような紋様が醸す儚さに心を奪われました。笛吹きガラスは、千数百度に達したルツボの中で、作家が独自に調合した原料を溶かして素地にし、竿(パイプ)に巻き取って、息を吹き込ませて作ります。プレスによる成形とは違い、一つひとつ異なる表情をしているのが魅力です。作り手は、荒川尚也氏。京丹波で晴耕社ガラス工房を営む、人気作家です。京都で展覧会をした折に知り合ったお弟子さんを通じて、ご縁をいただきました。毎年、5月に開催されるイベント「日本の夏じたく」にご招待をいただき、出会えた品です。

イベント会場の「三溪園」は、横山大観・下村観山らの日本画家を支えた、明治~大正期の実業家・原三渓が造り上げた、名庭園。敷地内に建つ「鶴翔閣」「白雲邸」「旧燈明寺本堂」の3つの施設を使い、ガラスや漆、和紙に織物、染織、建具、金細工など、「今を生きる」作家たちの自信の逸品が並びました。作り手の顔が見えるモノを手にすると、暮らしのなかに、ご縁をいただいた他者(作り手)とのかかわりと交流が吹き込まれる思いがします。使う度に、品物を手にした当日の記憶が蘇り、周縁の時間に奥行が生まれ、それら一連のある種の感傷が、生活に“見えない彩”を添えてくれる気がするのです。

さて、このグラス。冷酒や焼酎も良いけれど、球体の氷を一つ入れ、お気に入りのアイラ島のWhiskyを注ぎたく。琥珀色の儚さを味わいながら、時間旅行と洒落こんで。

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